| 開催日 | 2025年6月15日 |
| ゲスト | 小俣 億学さん |
| コメンテーター | 稲本 正 |
6月15日、共生進化ネットの取材は、小俣億学さんの畑からお届けしました。
今回のテーマは、「里山」「雑穀」「人のつながり」。そして、日本の食と暮らしの“これから”です。
里山は、かつて“食の宝庫”だった
稲本は、里山の植物をまとめた図鑑を手にしながら語ります。
「この図鑑に載っている植物、ほとんどこの辺にあるんだよ」
春の七草に代表されるように、日本の里山には食べられる植物が数多く存在してきました。山菜や野草は、かつて人々の暮らしに深く根付いた“日常の食材”だったのです。
しかし今、日本の食卓は次第に単調になり、海外から輸入された食料が中心になっています。大量輸送に向いた作物が選ばれ、旬の山菜を少しずつ採って食べる文化は衰退しました。
その結果、
「食べなくなった」
「食べ方が分からなくなった」
という状況が生まれています。
山が荒れ、恵みが見えなくなった
昔は人が多く、里山は日常的に手入れされていました。枝を払い、草を刈り、山菜を採りながら、山と共に生きていたのです。
ところが人口減少により、里山は次第に荒れ、植物は他の草木に覆われて見えなくなりました。整備すれば再び姿を現すものもありますが、そこにはどうしても“人の手”が必要です。
稲本は、かつて6000人いた集落が今では2000人ほどになった例を挙げ、
「人が減ることで、食文化も消えていく」
という現実を指摘しました。
雑穀づくりが、暮らしを変える
今回の取材の中心は「雑穀」です。
小俣さんの畑では、5月中旬から下旬に種をまき、夏には背丈が人を超えるほどの高キビやキビが育ちます。収穫後は、節を残して刈り取り、軒下で2週間以上乾燥させます。
その後、足踏み脱穀機を使い、最後は手作業で粒を落とす――。
決して楽な作業ではありません。
しかし雑穀は、
- 栄養価が高い
- 保存がきく
- 料理の幅が広い
という、大きな可能性を秘めた食材です。
稲本はこう語ります。
「トマトが流行れば、トマト料理は増える。
でも雑穀料理は、まだまだ少ない。
もっと研究する人が必要なんだ」
白米に混ぜて炊くだけでも、健康的で美味しい主食になります。
“種を残す人”と“受け継ぐ人”
雑穀の栽培は、単なる農作業ではありません。
そこには「種の継承」という大切な意味があります。
かつて在来種を守ってきた中川さんが亡くなった後も、その種を受け継ぐ人がいたからこそ、今も雑穀は育てられています。
小俣さんが引き継いだアワは3種類、キビも複数系統。
しかし、すべての品種を守れたわけではありません。
「残す人がいても、受け継ぐ人がいなければ、種は消えてしまう」
その言葉が、静かに重く響きます。
農業は“売る”だけでは続かない
小俣さんは、通販やふるさと納税で芋類や野菜を販売しています。
来年からは雑穀も返礼品にしたいと、増産に取り組んでいます。
しかし、売れるほどに必要になるのが“人手”です。
稲本はこう語ります。
「農家は、病気になったら終わり。
支える人がいなければ続かない」
農業は、種まきから収穫、販売まで、やることが無数にあります。
経験が必要で、新規就農が難しい理由もそこにあります。
都会と農をつなぐ、新しい仕組み
稲本が提案したのは、
「農業を“運動”として取り入れる仕組み」です。
都会でパソコン作業に追われ、運動不足になる人たちが、
農業や山の手入れを通じて体を動かし、自然と関わる。
スポーツクラブのように、
“一定期間だけ手伝える仕組み”があれば、
農業の人手不足も、健康問題も、同時に解決できるかもしれません。
小俣さん自身も、バケツ稲から始め、5年かけて1200㎡の田んぼに広げた経験を語りました。
「小さく始めて、少しずつ広げればいい」
“食べる”は、最高の学び
稲本は、かつて子どもたちと米作りをした経験を振り返ります。
「自分で作った米は、人生で一番うまいって言うんだよ」
収穫体験を通じて、
野菜が苦手だった子どもが、野菜を好きになる。
そんな変化も生まれています。
作る → 食べる → 喜ぶ
この循環こそが、本当の“食育”なのかもしれません。
次は「体験を都市へ」
稲本は、横浜で予定しているイベントで、畑の作物を展示し、試食を通して“食の体験”を届けたいと話しました。
そのためにも、畑を支える人を増やし、土地の可能性を活かしたい。
6月29日のじゃがいも掘りだけでなく、
継続的に手伝いたい人は「農天氣」へ連絡してほしい――
そんな呼びかけで、今回の取材は締めくくられました。
共生進化のモデルとして
食料とエネルギーを自給し、人が関わり、自然と共に暮らす。
小俣さんの畑は、これからの日本に必要な“共生進化”のモデルなのかもしれません。
次回は6月22日。
中間報告とともに、さらに深い視点から「これからの社会」を考えていきます。
