田舎育ちの「野生」が人生を支える―武内陶子さんと語る、自然・子育て・想像力

開催日2024年11月24日
ゲスト武内陶子さん
コメンテーター稲本 正

「元気で、食べ物が大好き」。稲本さんがそう評して迎えたゲストが、武内陶子たけうちとうこさんです。今回の共生進化ネットは、武内さんを迎えての3回目。初回の導入として、まずは武内さんのこれまでと、稲本さんとの意外な共通点を掘り下げていきました。

最初のゲストを“女性だけ”にした理由

稲本さんは、番組の初期ゲストをあえて女性に揃えたと語ります。中村桂子さん、野中ともよさんに続いて、武内さんが3人目。
周囲からは「男性も出したほうがいい」という声もあったそうですが、稲本さんは日本のジェンダー格差の現実に触れ、「女性が生きづらい社会の中で、どう苦労してここまで来たのか。そしてこの先どう生きるのかを聞きたい」と話します。

武内さんもその意図を受け取り、「選んでいただいてありがとうございます」と応じました。

NHK取材での出会い―「ワイルドな場所」への驚き

二人の最初の接点は、武内さんがNHKの番組に出演していた頃の取材でした。武内さんは「おはよう日本」のキャスター時代、稲本さんが運営するオークビレッジを取材するため、日野の山中を訪れたことがあるそうです。

山の中の澄んだ谷川、そして自然の中を歩く稲本さんの姿に、武内さんは「NHKにしてはちょっとワイルドだな」と感じたと振り返ります。稲本さんも、場所を選んだ理由として「谷川の水がきれいに流れていたことが大きかった」と語り、自然と生きる場の感覚がにじみます。

33年のNHK人生と、退職後の“これから”

武内さんはNHKに33年在籍し、紅白歌合戦、朝の番組、クイズ番組などさまざまな現場を経験してきました。現在はキャスター業からは距離を置きつつ、ときどきナレーションなどで関わっているとのことです。

退職の場面では「定年退職の手続きが驚くほどあっさりしていた」と笑いながらも、「人生100年時代、まだまだ頑張って」という空気に背中を押された感覚があったと語ります。

稲本さんもまた、オークビレッジで長く社長を務めた後に退き、今はより世界へ向けた動きを意識していること、息子さんたちが海外にいることなどを話し、話題は自然と「これからの生き方」へと移っていきました。

山で育つと、別の“情報”が入ってくる

ここで二人の共通点が浮かびます。武内さんは愛媛の山の中で育ち、稲本さんもまた山と深い距離で生きてきました。

武内さんは、子どもの頃にカエルを釣ったり、自然の中で遊び回った経験が今の自分をつくっていると語ります。そして「山の中は文化の中心ではないけれど、別の情報が入ってくる感じがある」と表現しました。都会的な情報ではなく、身体で覚える情報。空気、風、匂い、危険、暗さ、静けさ―そうしたものが、後から効いてくるのだと思わされます。

台風の記憶が“身体”に残る

武内さんは、幼い頃に強烈な台風を経験した記憶を語ります。窓がガタガタ鳴り、停電で薄暗い家の中。外から取ってきた草で一人で遊んでいたこと。風や空気の感覚が、今でも身体の中に残っているという話はとてもリアルでした。

稲本さんも「経験しているかどうかで、対応力は変わる」と頷きます。勉強は“予測できることへの対策”になりやすい。しかし自然は予測不能なことが起きる。だからこそ、自然体験は人を鍛える―そんな方向へ議論は深まっていきました。

「温室育ち」の時代に、人生は長くなった

稲本さんは、現代人の多くがある種の“温室育ち”になっているのではないかと話します。便利さは増え、危険や不確実さから遠ざかる一方で、人は長寿化しました。

昔は「60歳で定年、その後はあまり考えなくてもいい」時代だったかもしれません。しかし今は違う。長い人生をどう組み立て直すかが、誰にとっても現実的なテーマになっています。

武内さんも、子どもが3人いて、下の双子の娘さんが中学2年生であることを明かし、「まだまだ頑張らないと」と率直に語りました。

双子育児は“きっちり2倍”です

話題は双子育児へ。稲本さんは「双子は1.5倍ではなく、ちゃんと2倍大変」と強く言います。武内さんも「2歳くらいまで記憶がないほど大変だった」と笑いながら同意しました。

当事者にしか分からない大変さを、軽く言葉にしない。ここには、共感とリアリティがありました。

積み木が教える、子どもの“自由”と大人の“枠”

武内さんは、オークビレッジの積み木を持参して紹介します。木の名前が書かれていて、遊びながら文字に興味を持つ子もいるという話も出ました。

そして何より印象的だったのが、「積み木で遊ぶと、大人の発想の固さに気づく」という言葉です。大人は家を作るなど“それっぽい正解”へ寄せがちですが、子どもは違う。動物園にもお風呂にも檻にもなる。素材が増えるほど、発想が開いていく。

稲本さんも、「子どもが自由でいられる場所を確保することが、今は難しくなっている」と受け止めました。

最後は銀杏の香りで、場がほどける

締めくくりに稲本さんは、前日に八王子で森の手入れをした際に拾った銀杏を持参したと話します。洗って干して、封筒に入れてレンジで加熱する―そんな暮らしの知恵が挟まれ、場がふっと温まります。

「数粒でもうれしいです」と笑う武内さん。自然と共にある暮らしが、こうして会話の端々に滲んでいました。


次回予告:写真とともに、幼少期からゆっくりと

この回は“初回の導入編”として、二人の出会いと共通点、そして自然体験が人をつくるという話題が中心でした。
次回(2024年12月1日)は、武内さんが幼少期の写真も持参し、さらにじっくりと人生を振り返る予定とのことです。

続きが楽しみになる、あたたかい30分でした。