「ひらめきは進化する」―太刀川英輔さんが語る“創造性”の正体と、偶然と必然のデザイン

開催日2024年12月22日
ゲスト太刀川英輔さん
コメンテーター稲本 正

「世の中に、こんなに頭の構造が似ている人がいるのか」—。
稲本さんがそう感じて思わず連絡した相手が、今回のゲスト・太刀川英輔さんです。

きっかけは、太刀川さんの“熱い本”でした。読んでいるうちに、体調まで持っていかれるような、いわゆる「読む側の覚悟も試される本」。しかし、読めば読むほど「これだけ熱く書く必要があった」ことが分かってくる。そんな導入から、今回の対談は始まりました。

この記事では、12月22日配信回の内容をもとに、太刀川さんがなぜ“進化”から創造性を捉え直そうとしたのかを、ブログ記事として読みやすくまとめます。

「才能」のブラックボックスを壊したかった

太刀川さんはデザイナーです。建築を学び、在学中から建築計画や家具デザインに関わりつつ、グラフィックデザインも独学で身につけ、そのまま独立して活動を広げてきました。

一方で、デザインや創造性という分野には、よくある“空気”があります。

  • センスは才能の問題
  • うまくなるかどうかは生まれつき
  • やり方は言語化できない

しかし太刀川さんは、その扱い方に強い違和感を抱いていました。
「学び方が分からないままでは上達できない。だから必ず“学び方”があるはずだ」と考え、自分自身で学び方をつくってきたのです。

人間はなぜ「コップ」や「本」を作れるのか?

太刀川さんが創造性にこだわる背景には、根源的な疑問がありました。

DNAの観点では、人間はチンパンジーと大部分を共有しています。
にもかかわらず、なぜ人間だけが家具を作り、本を書き、道具を設計できるのか。

「発想とは何なのか」
「創造性とはどういう現象なのか」

この問いが、太刀川さんの思考の中心にあり続けました。

オーガニックショップで知った「大切なはずなのに語られないこと」

もう一つの原点は、太刀川さんが大学に入る前に働いていたオーガニックショップでの経験です。

そこではディープエコロジーなどの思想が、当たり前のように語られていました。
ところが大学で建築を学び、社会を見渡すと、そうした話を本気で語る人がほとんどいない。
「こんなに重要なはずなのに、なぜデザインの中心的トピックになっていないのか」——この違和感が強く残ったといいます。

当時、サステナビリティやエコロジーのムーブメントは、むしろ忘れられかけていました。
しかし太刀川さんは、そこにこそ「本質」があると感じていました。

本質を考えられなければ、創造的にはなれない。
では、本質を考える方法とは何なのか。
創造性を生む方法とは何なのか。

その問いを掘り続けた結果、ある仮説に行き着きます。

創造は「進化」とよく似ているのではないか

太刀川さんがたどり着いたのは、創造という現象が生物の進化と似た構造を持っているのではないか、という考えでした。

進化には基本となる型があります。
それが「変異」と「適応」です。

  • 変異:エラーのように個体差が生まれる(多様性の源)
  • 選択圧:環境によって生き残りやすさが変わる
  • 適応:膨大な時間と試行の繰り返しで方向性が生まれる

生き残るかどうかは偶然性に左右される。
けれど、偶然の連続が長期的には「方向性」を生み、結果として適応が起きる。

太刀川さんは、この仕組みが、デザイナーの頭の中で起きていることにそっくりだと感じたのです。

いいアイデアには「クレイジーさ」が必要です

創造的な仕事をしようとするとき、常識に縛られていては突破できません。
太刀川さんは、優れた発想には「クレイジーさ」が必要だと語ります。

つまり、まずは変異が必要です。
多様なアイデアが生まれなければ、新しい可能性は開けません。

しかし、クレイジーな案が出ただけでは、社会は動きません。
実装も説得もできない。

そこで必要になるのが、状況を観察し、選択圧を読み取る力です。
「なぜ今これが必要なのか」
「これは偶然ではなく必然として成り立つのか」
そうした根拠づけによって、アイデアは現実へ変わります。

この「偶然と必然の往復」が、まさに進化と似ている、というわけです。

驚きが生まれるのは、創造が“偶然”に支配されているから

対談の終盤で、話はさらに深いところへ進みます。
進化には「思考」が背景にありません。自然に起きる現象です。
では創造性はどうか。

太刀川さんは、私たちは「自分が思考して生み出した」と思いがちだが、実は創造性もまた偶然に大きく左右されているのではないか、と述べます。

自分の発想に驚くのは、それが意図通りの結末ではないからです。
状況や偶然が導いた答えだからこそ、驚く。

そう考えると、デザイナーは「偶然と必然の間」を揺れ続けながら、試行と探求を繰り返し、やがて思ってもみなかった方向へ結実していく——そのプロセス自体が、創造の正体なのかもしれません。

マインドフルネスや瞑想が「効く」理由

この話は、マインドフルネスや瞑想の話題にもつながります。

稲本さんは、若い頃は「そんな暇があるか」と思っていたが、成功している人ほど実践していると感じる、と語ります。
いったん無にすることで、新しい偶然に出会う余地が生まれる。
つまり「偶然の入口」をひらく行為として、瞑想は機能しているのではないか—という視点です。

次回予告:創造性の「具体的なトリガー」へ

今回は、創造性を「進化」の構造として捉え直すところまでが中心でした。
次回は、太刀川さんの本にも登場する図や具体例をもとに、創造性の“トリガー”をより実践的に掘り下げる予定です。