ブランド戦略家レイ・イナモトが語る「アート × サイエンス」で世界を動かす方法

開催日2025年8月31日
ゲストレイ・イナモトさん
司会原田 伸介
コメンテーター稲本 正

「共生進化ネット」第44回のゲストは、なんと司会者である稲本さんの実の息子──
世界的ブランド戦略家レイ・イナモトさんです。

親子対談は少し気恥ずかしいということで、今回は原田さんも交えて、“世界の最前線で活躍する日本人クリエイターは、何を考え、どう歩んできたのか”
その核心に迫った内容となりました。

この記事では、対談の第一回をブログ読み物として再構成しています。


レイ・イナモトとは何者か?

— 「ブランド構築のパートナー」として世界の企業と向き合う

レイさん自身が語る最もシンプルな肩書きは、

「企業のブランド構築を支援するパートナー」

ニューヨーク・東京・シンガポールを拠点に、ユニクロ、トヨタ、パナソニック、アシックスなど、国内外の大企業経営者と共にブランド戦略を作り上げています。

単なる“広告会社”ではなく、企業が世界でどう語られ、どう信頼を獲得していくかその根幹を形づくる役割です。

2015年に起業した当初は、まさか日本企業の仕事がここまで増えるとは思っていなかったとのこと。
しかし、ユニクロの柳井社長との出会いを皮切りに、日本企業との仕事が加速していきました。

なぜ拠点はニューヨーク・東京・シンガポールなのか

—— 世界をつなぐ“距離の解消”とパンデミックがもたらした変化

レイさんの拠点は3都市。
理由は単純に「需要があるから」ですが、その背景には仕事の変化があります。

2019年、東京オフィスを設立。
ところがわずか半年後、パンデミックで渡航が制限され、日本へ行くことも帰ることも困難な状態に。

しかし、彼は言います。

「パンデミックのおかげで、リモートでの経営者との対話が普通になった」

それまで“経営層とは対面で会うのが常識”だった日本企業にも、急速にリモート文化が浸透。
経営者とオンラインで深い議論ができる環境が整い、むしろ距離を超えて仕事が広がる結果となりました。

AKQA時代:世界14拠点を飛び回った日々

—— “広告は終焉する”と見抜いたクリエイティブの最前線

起業前のレイさんは、世界的クリエイティブエージェンシー AKQAエイ・ケイ・キュー・エイ のチーフ・クリエイティブ・オフィサー(CCO)として活躍していました。

  • 世界14オフィスを飛び回り
  • 経営者と直接向き合い
  • デジタルを用いた新しいコミュニケーションを構築する

まさに最前線での経験が、現在のブランド戦略に生きています。

そしてレイさんは10年以上前から、

「広告は終わりつつある」

と感じていたと言います。

広告を大量投下するモデルから、ブランドが“信頼”でつながる時代へ。
これが起業の大きな動機になりました。

カンヌライオンズでの挑戦

—— 日本人初の審査員として、世界の基準を見つめる

レイさんは20年近く、世界最大級のクリエイティブ賞 カンヌライオンズ に参加しており、日本人として初めて審査員を務めた経歴を持っています。

カンヌは今や“広告”という枠を超え、顧客と企業の関係をどう築くか
そのすべてが問われる場所。

アートとデジタルを融合したレイさんの視点は、世界でも高く評価されています。

アート × サイエンスの原点

—— 大学生で「美術 × コンピュータサイエンス」のダブルメジャーに挑戦

学生時代、レイさんは美術学部とコンピュータサイエンスの ダブルメジャー(2専攻) を選びました。
日本ではまず見られない経歴です。

  • 昼はアート
  • 夜は工学部でプログラミング

という生活を続けた結果、卒業は5年に。

「異なる分野を混ぜることで、新しい価値は生まれる」

この思想が現在の仕事の根幹となっています。

道を決めたきっかけは“父が渡した一冊の本”

— 13歳の少年を動かした「精神と物質」

レイさんがこの道に進む決定的なきっかけは、13〜14歳の頃に父から手渡された一冊の本だと言います。

川勝平太 × 立花隆『精神と物質』

「感情は科学的に説明される日が来る」

この言葉に衝撃を受け、“アートを科学で読み解く”という視点に目覚めたと語ります。

アートは「余白」があるから面白い

— デジタルがその余白を“理解する手助け”になる

対談中、原田さんが興味深い指摘をしていました。

「アートは分からないからこそ、余白ができる」

理解しきれない部分があることで、受け取り手が想像を重ねることができる。

レイさんが学んだデジタル技術は、この“余白への理解”を助ける道具になり、アートとサイエンスの架け橋となりました。


まとめ:多様性を掛け合わせて、新しい価値は生まれる

今回の対談を通して見えてきたのは、
レイさんの軸には常に 「異分野の融合」 があるということ。

  • アート × サイエンス
  • 日本 × 海外
  • デジタル × 感性
  • 経営者 × クリエイター

この交差点から、新しいブランドの形が生まれているのだと感じました。

次回は、
「レイ・イナモトはどう育ち、どう世界へ飛び立ったのか」
生い立ちに焦点を当てて深掘りします。

ぜひ続編もお楽しみに。