西村氏と稲本正氏が語る「人間の未来」と“クロスポリネーション”

開催日2025年12月07日
ゲスト西村 真里子さん
コメンテーター稲本 正

今回はハートキャッチCEOの西村真里子氏と、思想家・作家の稲本正氏による濃密な対談です。
テクノロジー、アート、自然、脳科学、自治体、プレゼンテーション――互いの知を縦横無尽に交差させながら、「これからの人間と社会はどうあるべきか」を語り合いました。


“アメリカでは評価されたのに、日本ではダメだった”

冒頭では稲本さんのエピソードから始まります。
かつてレイ氏(人物名)はアメリカでは高評価だったにもかかわらず、日本ではまったく認められなかった時期がありました。

その際に彼を支援したのが、西村氏でした。

実は二人の出会いは2005年。
当時すでに世界で名を上げていた西村氏に、稲本さんは「憧れに近い感情を持っていた」と語ります。
そこから20年近い交流が続いているのです。

西村氏の原点:IBM、ICU、そして“海外とつながる喜び”

西村氏が海外を舞台に活躍するようになった理由は、初期キャリアにあります。

  • IBMでエンジニアとして、日本とNYラボを横断
  • IBM.comのグローバルプロジェクトに参加
  • ICU(高校/大学)で哲学、アート、歴史、国際法、コンピュータを横断的に学ぶ

「外の人と一緒に働くことが面白い。最初からそう感じていた」

という言葉が印象的です。

世界最大のテクノロジー展示会「CES」を13年連続で観測

西村氏といえば、このキーワードを外すことはできません。

●CESとは?

ラスベガスで毎年開催される “世界最大規模のテクノロジー展示会”。

かつては「家電ショー」と呼ばれていましたが、現在は
IoT、スマートシティ、コネクテッドカー、宇宙技術
まで領域が拡大。テクノロジーの未来が集約される場になっています。

西村氏は 13 年連続で定点観測 し、そのまま来年で 14 年目に突入します。

「新しい技術を常にアップデートすることが、自分のビジネススタイルとして欠かせない」

IBM時代から続く“知の習慣”が今も生きています。

静岡へ拡張する知:テクノロジーで地域を変える

突然のように見えて、静岡との関わりも必然でした。

きっかけは静岡フィナンシャルグループ・中西会長からの依頼。

  • 静岡の企業や自治体にテクノロジーを導入する仕組みづくり
  • スタートアップとのマッチング支援
  • 「Tech Beat」プロジェクトの立ち上げ
  • 天竜の山奥での分散型地域モデルの構想
  • 俊花堂とのクリエイティブ企画

“テクノロジーと地域”という組み合わせは、ある意味で日本の未来の縮図でもあります。

静岡が持つ自然力・文化力・技術力に、外部の知を“媒介”させることで新たな価値を生む――
まさにポリネーター的な活動です。

美大生に「起業」を教える理由

西村氏は武蔵野美術大学の客員教授として、美大生にアントレプレナーシップを教えています。

その背景には、

「アーティストがビジネス視点を持つことで、新しい価値が生まれる」

という確信があります。

美術 × 経営はこれまで遠い関係に見られがちでしたが、
クリエイティブイノベーション学科では、まさにその境界を越える挑戦が行われています。

著書『演劇とビジネス』が問いかけるもの

西村氏の新著は、“演劇からビジネスが学べること”を探った一冊。

しかし、よくある「演劇的スキルをビジネスに応用する本」とは一線を画します。

ポイントは、

  • 演劇のテクニックではなく“演劇的思考”が重要
  • プレゼンはジョブズの真似だけではない
  • 「読み手が自分で抽出する価値」を示す構造にしている

という点。

フランスで文化勲章も受けた演出家・宮城氏や、国内大企業の経営者へのインタビューを通じ、
“ビジネスとアートをつなぐ脳の使い方”が深く語られています。

脳科学と自然の話に広がる:「人間はなぜ人間なのか」

対談の後半は、稲本さんの専門領域である自然・脳・情報の話へ。

●人間の脳は「39兆の細胞」「100兆以上の細菌」とともに働く

その相互作用が“波”を生み、人間の感情・創造性を形づくっている。

●AIにはこの“波”がない

だからこそ、すべてを代替することはできない。

●森の情報量は渋谷交差点より圧倒的に多い

蝶は20km離れた地点から香りを察知して飛来する――
自然界の情報ネットワークは、まだ完全には解明されていない。

これらの話は、
アートの直感 × ビジネスの論理 × 自然の構造
が三位一体で未来を形づくるという示唆に満ちています。

シビックテックと「分散型社会」への希望

話題は国家・自治体の未来へ。

西村氏は言います。

「これからの行政はトップダウンだけでは限界。
市民レベルのグラスルーツがテクノロジーと共に参加する社会になる」

静岡での実践例はまさにその原型で、
ボトムアップの意思決定モデル を取り入れた地域づくりの萌芽が生まれています。

稲本さんもこれに強く共感し、

「子どもの頃から“新しいコミュニケーション”を学ぶ必要がある」

と述べました。


■対談を終えて:未来を変える“問い”を持ち続けること

最後に、稲本さんはこう語っています。

「世界を変えるために何が必要か。
この続きは、また次回じっくり話したい」

第2回は「対話が未来をつくる」という実感に満ちた回となりました。
テクノロジーでもアートでも自然でもなく、
それらをつなぐ“人間の視点”そのものが本質である――という気づきが得られます。

次回の共生進化ネットも、ぜひお楽しみに。