| 開催日 | 2025年3月21日 |
| ゲスト | 武内陶子さん |
| コメンテーター | 稲本 正 |
NHKを退職し、フリーアナウンサーとして新たな一歩を踏み出して1年。
来年には還暦を迎える武内陶子さんが、共生進化ネットにゲスト出演されました。
番組の冒頭、武内さんはこんなエピソードを紹介されました。
「出かける前に、娘が“ママ、木の精みたいでいいよ”って言ってくれたんです」
行き先も用事も伝えていなかったにもかかわらず、自然を感じさせる言葉をかけられたことに、武内さん自身も驚かれたそうです。このひと言が、今回の対談全体を象徴しているように感じられました。
引っ越し20回の人生が育てた“遊牧民の感覚”
武内さんは幼少期から引っ越しが多く、これまでに20回ほど住む場所が変わったそうです。
愛媛、岡山、松山、島の暮らしなど、山も海もある自然豊かな環境で育たれました。
占いで「前世は遊牧民」と言われたことがあるそうですが、ひとつの場所にとどまらず、さまざまな世界を見たいという感覚は、現在の生き方にもつながっています。
大学時代にはカナダへ留学され、この経験が武内さんの価値観を大きく変えることになりました。
「カナダの山、綺麗ですね」—その言葉が突きつけた現実
留学のためにカナダへ向かう飛行機の中、隣に座った初老の男性と会話をしながら、窓の外に広がる色とりどりの山を見て、武内さんは素直にこう伝えたそうです。
「カナダの山って、綺麗ですね」
しかし返ってきたのは、思いがけない言葉でした。
「日本人が木を切って持っていくから、こうなっているんだ」
美しいと思っていた風景の裏側に、日本の大量輸入という現実があることを初めて知り、強い衝撃を受けたといいます。
「見えているもの」と「真実」は違う——。
この体験をきっかけに、武内さんはこう感じるようになりました。
「もっと世界のことを知らなければいけない。
世界に開かれた仕事がしたいと思いました」
アナウンサーを志した理由の一つが、ここにありました。
還暦を前にしても、人生は“もう一度”始められます
番組では、80歳でYouTubeを始めた稲本正さんのお話も紹介されました。
その姿に、武内さんは率直な驚きを示されます。
「80歳と聞くと“おじいさん”のイメージがありますが、全然そんな感じではありませんね」
稲本さんは、70歳で引退するつもりだったそうですが、実際には70歳を過ぎてからの方が忙しくなり、新しい挑戦を続けているといいます。
この話に、武内さんも深くうなずかれていました。
人生100年時代と言われる今、
50代・60代は終盤ではなく、再スタートの時期なのかもしれません。
自然に触れることが、心と言葉を育てます
武内さんは、子どもたちが自然に触れる機会が減っていることに、強い危機感を抱いておられます。
タブレットやスマートフォンなど、情報はあふれていますが、実際に体で感じる「体験」が不足していると感じているそうです。
そんな中で、武内さんご自身が体験された農業ボランティアのお話が印象的でした。
富山のワイナリーで、ぶどうの選果作業を朝から夕方まで黙々と続ける。
音楽もラジオもなく、ただ手を動かす時間。
「だんだん、ぶどうが発酵してくる香りがしてくるんです」
この“身体で感じる時間”が、食べ物への見方を大きく変えたといいます。
「自分で手伝って作られたものは、
とても大切に感じますし、より美味しく感じるんです」
小学生の“米づくり”が、今も心に残っています
武内さんは、小学6年生のときに児童会長として、1年がかりの米づくりを企画した経験も語られました。
- 昔ながらの田んぼづくり
- 作業歌
- 虫送りの儀式
- 収穫祭と餅つき
45年以上前の体験にもかかわらず、細部まで鮮明に覚えているそうです。
それだけ「体験」は、記憶にも価値観にも深く刻まれるものなのだと感じさせられます。
言葉の仕事をしてきたからこそ、伝えたいこと
長年アナウンサーとして“言葉”を扱ってきた武内陶子さん。
だからこそ、自然や食、体験の大切さを、言葉にして伝え続けておられます。
自然に触れること。
自分の手で作ること。
それを食べること。
どれも特別なことではありませんが、今の社会では“特別な体験”になりつつあります。
「今日食べたもので、明日の自分ができる」
番組の終盤、こんな印象的な言葉が交わされました。
「私たちは、今日食べたもので明日の自分ができます」
「食べ物がまずくなるということは、私たち自身がまずくなるということです」
自然、農業、教育、人生。
すべてが、日々の“食”につながっています。
還暦を迎える今、武内陶子さんが見つめる“次の景色”
「木の精みたい」と娘さんに言われた朝。
それは、年齢を重ねたからこそ醸し出せる、自然体の美しさなのかもしれません。
還暦を迎える今も、
武内陶子さんの視線は、次の世代と次の未来をしっかりと見つめています。
