「ビートルズが“世界の空気”を変えた日」ピーター・バラカンさんが語る「音楽が広がる理由」とライブの魔力

開催日2026年1月11日
ゲストピーター・バラカンさん
コメンテーター稲本 正

「共生進化ネット」第2回のゲストは、音楽紹介の第一人者・ピーター・バラカンさん。
今回の対談は、バラカンさんが日本でラジオの仕事を始めた頃の話から、ビートルズが社会ごと変えてしまった“現象”の正体、そして「ライブが持つ力」まで、音楽の核心に触れる回となりました。


日本に来て6年後、ラジオの仕事が始まった

稲本さんが「日本に来て落ち着いてから、音楽が仕事になっていったんですよね」と話を向けると、バラカンさんはこう答えます。
日本に来てから約6年ほど経った頃に、ラジオの仕事が始まった。
ここから彼は、単なる“洋楽好き”ではなく、日本で音楽を紹介する存在として本格的に歩き始めていきます。

「苦手な音楽」がはっきりしているバラカンさん

バラカンさんは「好き嫌いが激しい」と言われがちですが、本人いわく「好きな範囲はかなり広い」。
ただし、苦手なものは明確です。

  • ハードロックのように、激しくてうるさい音楽(若い頃から苦手)
  • テクニックを見せびらかすタイプの音楽
  • 極端に商業的な匂いが強い音楽

ここが面白いところで、単に「音が強いから嫌」ではなく、**“音楽が何を伝えるために存在しているか”**という軸が見えます。

音楽の原体験は「家の中で繰り返し流れていた音」

バラカンさんが語る原点は意外にも「熱心に探した音楽」ではありません。

9歳の時、親が初めてレコードプレイヤーを買った。
母が少ないレコードを何度も何度もかけていて、それが身体に染み込んでいった。

挙がったのは、ビリー・ホリデイ、レイ・チャールズ、ルイ・アームストロング、エラ・フィッツジェラルドなど。
バラカンさんはそれを「自分から聴いたというより、DNAの一部になった」と表現します。

好きになる音楽って、探し当てるより先に“刷り込まれる”ことがある。
この感覚、思い当たる人も多いのではないでしょうか。

ビートルズと共に育った世代の「衝撃」

そして話題は、避けて通れない存在へ。

11歳の時にビートルズがデビュー。10代は彼らと共に育った世代。

ビートルズのすごさは、単に名曲が多いことだけではない。
「毎回、新しいことをしてくれる」という期待に、ちゃんと応え続けたこと。
しかもそれが短期間だったこと。

  • ハンブルクで演奏を始めたのが1960年
  • 最初のレコードが1962年
  • 解散が1970年

実質、レコードを出していた期間は約8年。
それで“世界を塗り替える”って、冷静に考えると異常です。

ボブ・ディランが“ラブソングの壁”を壊した

対談が一気に深くなるのはここから。

ボブ・ディラン以前は、ポピュラー音楽はほとんどラブソングだった。
でも彼が現れて、「ラブソング以外でも歌っていい」と皆が気づいた。

つまり、ディランの登場で「歌詞の世界」が広がり、ビートルズもその流れの中で変化していった。
『ラバー・ソウル』で歌詞が濃くなったと感じた、という稲本さんの話に対し、バラカンさんも強く同意します。

さらに興味深いのは、ディランが最初は「歌い方が異質でラジオにかからなかった」という点。
時代の“常識の壁”を越えるには、やっぱり時間がいる。

なぜビートルズは最初から強かったのか?

ビートルズが最初から“ライブバンドとして強かった”理由も語られます。

デビュー前、ハンブルクのクラブで毎晩6〜7時間演奏していた。
荒い客もいる中で、同じ曲の繰り返しはできない。
だからレパートリーが増え、演奏力が鍛えられた。

これは結局、どの分野にも通じる話で、
**「場数は裏切らない」**が、ここまで極端に表れた例とも言えます。

リバプール訛りが「かっこいい」になった日

音楽以外の影響として語られたのが、アクセント(訛り)の話。

当時のイギリスではロンドンが中心で、地方のアクセントはダサいと見られがちだった。
でもビートルズが人気になったことで、北のアクセントがかっこいいものになり、真似する人まで出た。

音楽が流行るだけじゃない。
“地方の話し方”さえ価値を持ち始める。
これがカルチャーの持つ恐ろしいほどの波及力です。

ライブの魔力:「空気が動く」体験

最後に語られたのが、ライブの強さ。

生で聞いた音楽は、空気の振動がある。
そして、コンサートは大勢で一緒に聞く体験だから、共有感が生まれる。

レコードやラジオは「一人の体験」になりがち。
でもライブは「空間ごと共有する体験」。

だからこそ、武道館に行ったかどうかが“勲章”のように語られるのかもしれません。


まとめ:音楽は、共感と体験で広がっていく

今回の対談を一言でまとめるなら、こうです。

音楽は、理屈で広がるんじゃない。共感と体験で広がっていく。

ビートルズが世界を変えたのは、名曲が多いからだけではなく、
演奏力、場数、プロデュース、そして時代の空気すら巻き込む存在感があったから。

そしてライブは「空気が動く」という、録音では再現できない体験を人に渡してくれる。

次回は、いよいよYMOの話へ。
また“日本発の世界”について、どんな視点が飛び出すのか楽しみです。