雨がくれる“本当の豊かさ” ―川もない畑で育つ、自然任せの強い野菜たち

開催日2025年6月8日
ゲスト小俣 億学さん
コメンテーター稲本 正

6月8日(日)、共生進化ネットの取材で小俣億学おまたとしのりさんの畑を訪れました。
この日はしとしとと雨が降っていましたが、稲本は笑顔でこう言います。

「これは“恵みの雨”ですね」

実はこの畑、近くに川もなく、基本的に雨水だけで約2ヘクタール近い農地をまかなっています。猛暑の年は大変なこともありますが、雨のタイミングを見ながら土の状態を整えることで、自然の力を最大限に活かしているのです。


雨と土を味方につける農業

小俣さんは、麦、ネギ、花、葉物野菜など、さまざまな作物を育てています。
作物ごとに水の必要量が違うため、マルチの敷き方や土の押さえ方、作業のタイミングを細かく調整して、水分が逃げにくい畑をつくっています。

「世間では雨は“困るもの”と思われがちですが、農業にとっては助けになる。
しかも、少し体を休める時間にもなります」

稲本の言葉に、小俣さんも頷きます。

さらに、この畑の土はとても良質で、肥料や農薬に頼らなくても作物が育ちやすいそうです。
ただ、周囲の里山は手入れが行き届いておらず、イノシシやシカが下りてきやすい環境になっています。

畑が“餌場”として覚えられてしまうと被害は深刻。
だからこそ、人の手で里山を整えることが重要なのですが、ここにも人手不足という現実が立ちはだかります。

麦から雑穀へ。自然の成長力を活かす

一行は畑の奥へ進み、麦の区画を確認しました。
播く時期は少し遅れたものの、麦は順調に成長中。収穫は6月頃の予定です。

麦の後には、高きびなどの雑穀を植える計画もあります。
6月下旬に種をまけば、9月下旬には収穫できるほど成長が早く、背丈が3メートル近くになることも。

「雑穀の生命力ってすごいですね」

稲本も、自然の成長スピードに驚きを隠せません。

伝統野菜「東京長かぶ」と鶴漬け

次に案内されたのは、ナバナが咲く畑。
ここでは「東京長かぶ」という在来品種が育てられています。

このかぶは、上野原市秋山地区に伝わる伝統的な漬物「鶴漬け」に使われてきたもの。
秋にかぶを収穫した後、抜かずに残しておくと、春にナバナとして再び収穫できる“二度取り”ができます。

葉も柔らかく、辛味が少ないため、そのままでも美味しく食べられるのが特徴です。

ただし、こうした畑も獣害と無縁ではありません。
ネットや電気柵を設置しても、シカは簡単に飛び越えてしまうこともあるそうです。

20日で収穫?野菜の意外なスピード

囲いの中には、ラディッシュ、小松菜、ほうれん草などが並んでいます。
ラディッシュは芽が出てから2〜3週間で収穫できる、超スピード野菜。

種まきをずらして行うことで、次々と収穫できるよう工夫されています。

土づくりには、前年の雑穀の残渣(茎や葉)と、学校給食由来の堆肥を使用。
化学肥料に頼らなくても育つ“循環する土”ができてきたといいます。

「雑穀は人の栄養にもなるし、畑の栄養にもなる。
まさに“食べて、土に還る”存在ですね」

里山の恵みと、イノシシとの攻防

さらに奥へ進むと、ふき、野蒜(のびる)、わらびなどの山菜が自然に生えています。
里山を整備すれば、こうした恵みも得られるようになります。

一方で、菊芋を狙ったイノシシが畑を掘り返し、荒らしてしまうことも。
しかも、掘り返された菊芋は翌年さらに増えるため、結果的にイノシシの“餌場”が広がるという皮肉な現象も起きています。

人と野生動物の“取り合い”は、簡単には終わりません。

生で食べられる、ほうれん草の真実

最後に見せてもらったのは、ほうれん草畑。
見た目は市場の大きなほうれん草より小ぶりですが、えぐみが少なく、生でも食べられるほどやさしい味です。

「見た目が良い野菜が、本当に良い野菜とは限らない。
実際に食べて、自分の感覚で判断することが大切です」

冬になると、寒さから身を守るため糖分を蓄え、さらに甘くなるそうです。

ただし、ここでもシカ対策は欠かせません。
ネットも電気柵も、完全ではないのが現実です。

結球しない白菜?“ナバナ”という楽しみ方

最後に訪れたのは、ナバナの畑。
白菜のナバナ、からし菜、野良棒などが混ざって育っています。

白菜といえば“丸く結球する”イメージですが、ここではあえて結球させず、
春にナバナとして収穫・販売するために播種時期を調整しています。

稲本が実際に食べてみると、

「ちゃんと白菜の味がする。花も食べられるんですね」

茎のシャキッとした食感も良く、漬物にも加工できます。
一部の花はミツバチのために残し、自然との共存も意識しています。


次回は「農業の未来」を語る

取材の最後、稲本はこう締めくくりました。

「日本の農業が“珍しく生き残っている”状態ではいけない。
食料自給率の問題も含め、これからの農業を真剣に考えたい」

次回の共生進化ネットは 6月15日
農業の未来について、さらに踏み込んだ話が展開される予定です。