AI時代だからこそ“自然”が必要になる──モンベル辰野勇さんが語る「7つのミッション」と未来への希望

開催日2026年5月17日
コメンテーター稲本 正

アウトドアブランドとして知られるモンベル。
しかし、その活動は単なる“アウトドア用品メーカー”という枠には収まりません。
自然環境、教育、防災、地域活性化、健康寿命、農林水産業、そしてバリアフリー。

モンベル創業者の辰野勇さんは、長年の活動を通じて見えてきた「7つのミッション」を軸に、社会全体と向き合っています。
今回、稲本正氏との対談の中で語られた内容からは、「これからの時代に本当に必要なもの」が見えてきました。

モンベルが掲げる「7つのミッション」とは?

稲本氏は対談の冒頭で「社会貢献活動を“7つの柱”として明文化し、継続していること自体がすごい」と語ります。
対して辰野さんは「最初から7つを目指していたわけではない」と話しました。

20年、30年と活動を積み重ねる中で、自分たちが自然と取り組んできたことを振り返った結果、現在の形になったのだそうです。

その7つのミッションがこちらです。

  • 自然環境保全意識の醸成
  • 子どもたちの生き抜く力の育成
  • 健康寿命の増進
  • 災害時における対応力向上
  • エコツーリズムによる地域活性化
  • 農林水産業への支援
  • バリアフリーの推進

これらは単なる理想論ではなく、実際に全国各地で取り組まれている具体的な活動です。

「自然環境を守る」は、まず“好きになる”ことから始まる

第一のミッションは「自然環境保全意識の醸成」

辰野さんは、自然を守るためには、まず自然を好きになることが重要だと語ります。

アウトドア活動を通じて、

「自然って気持ちいい」
「また行きたい」

そう感じる体験こそが、環境保全意識につながっていくのです。
強制や理屈ではなく、“感覚”として自然を共有する。そこにモンベルらしい考え方があります。

今の子どもたちに必要なのは「生き抜く力」

第二のミッションは「子どもたちの生き抜く力の育成」

対談の中で稲本氏は、教育現場の現状について触れました。

学校教育はどうしても教室中心になりやすく、野外活動は管理上の理由から避けられることも多い。
しかしその結果、子どもたちが自然の中で学ぶ機会が減っているといいます。

辰野さんは「本来は家庭や地域で自然遊びをすればいい」と語ります。
自然の中には、予測不能なことがたくさんあります。

だからこそ、

  • 自分で考える力
  • 危険を察知する力
  • 仲間と協力する力
  • 困難を乗り越える力

といった、“生き抜くための感覚”が育っていくのです。

アウトドアは「健康寿命」を伸ばす

第三のミッションは「健康寿命の増進」

辰野さんは、病院で長期間過ごすのではなく最後まで健康的に生きることの大切さを語りました。
そのためには、日頃から身体を動かし、自然の中で活動することが重要だといいます。
アウトドアとは、単なる趣味ではなく健康そのものを支える文化でもあるのです。

災害時、本当に役立つのは“アウトドア知識”

第四のミッションは「災害時における対応力」

阪神淡路大震災や東日本大震災でも、テントや寝袋などのアウトドア用品は実際に大きな力を発揮しました。

さらに重要なのは“知識”です。

  • 水がない時にどうするか
  • トイレ問題をどう乗り越えるか
  • 限られた環境でどう生き延びるか

こうしたサバイバル知識は、非常時にそのまま命を守る力になります。アウトドアは、楽しみながら「防災力」を高める手段でもあるのです。

地域活性化とアウトドアは相性が良い

第五のミッションは「エコツーリズムによる地域活性化」

人口減少が進む地方には、豊かな自然が残されています。その自然を活かし、人を呼び込み、地域経済を元気にしていく。アウトドアと観光、地域産業を組み合わせることで、新しい価値が生まれていきます。

現在モンベルは、178の自治体や大学などと包括連携協定を結び、各地で地域課題に取り組んでいるそうです。

農林水産業を支える「アウトドア技術」

第六のミッションは「農林水産業への支援」

モンベルではアウトドアで培ったノウハウを活かし、一次産業向けの商品開発も行っています。
対談では、チェーンソーが当たっても刃が止まる防護製品の話題も登場しました。
こうした技術は、現場で働く人々の安全を支える重要な役割を果たしています。

AI時代に“価値が上がるもの”

対談後半では、AIの進化についても話が及びました。
辰野さんは「AIはすごい。しかし、AIには置き換えられないものがある」と語ります。

それが“感性”です。

自然の中で感じる空気、匂い、安心感、感動。・・・それらはAIでは再現できません。

むしろAIが発達する時代だからこそ、人間らしい感覚や体験の価値は高まっていく。
この視点は非常に印象的でした。

「まず自分たちが楽しむ」ことが大切

対談の最後、辰野さんはこう語りました。

「まず自分たちが楽しむこと。それが一番大事」

義務感ではなく、自分たちが本気で面白がっているからこそ、人が集まる。

その姿勢こそが、多くの人を惹きつける理由なのかもしれません。

まとめ

モンベルの「7つのミッション」は、アウトドアの話だけではありません。

  • 教育
  • 健康
  • 防災
  • 地域活性化
  • 環境問題
  • 農林水産業
  • 福祉

これらを横断しながら「人がどう生きるか」を考える取り組みです。

そしてAI時代に入った今だからこそ、“自然の中で感じること”の価値は、これまで以上に重要になっていくのかもしれません。

「聞いたことは忘れる。見たことは時々思い出す。しかし、体験して納得したことは、いつまでも忘れない」

この言葉が、今回の対談を象徴しているように感じました。