万博から20年─「自然の叡智」が残した本当のレガシーとは

2005年に開催された愛知万博(愛・地球博)。
いま振り返ると、あの万博はそれまでの万博とは少し違う存在だったと言えるかもしれません。

これまでの万博は、どちらかといえば「開発」や「国の技術力」を誇示する場でした。しかし愛知万博が掲げたテーマは「自然の叡智」。人類がこれから地球とどう共生していくのかを問いかける、まったく新しい万博だったのです。

当時は「環境がテーマの万博なんて成功するのだろうか」と懐疑的な声も少なくありませんでした。ですが結果として、多くの来場者を集め、21世紀の万博の方向性を示すイベントとなりました。


日本館総館長として関わった愛知万博

女優の竹下景子さんは、この愛知万博で「日本館総館長」を務めました。

当初、日本館は一つの会場で展示される予定でした。しかしさまざまな事情から、長久手会場と瀬戸会場の二つに分かれることになります。そのため竹下さんは、両方の日本館を統括する役割を担うことになりました。

この大役を引き受けたきっかけは、当時の環境大臣・中川一郎さんからの一本の電話でした。

「同い年なんだから、頼まれたらやってくれない?」

そんなフランクなお願いだったそうです。もちろん実際にはもっと丁寧な言い方だったそうですが、その熱意に押される形で引き受けることになりました。

万博を支えた「市民参加」という新しい形

愛知万博の特徴のひとつが「市民参加型」であったことです。

テーマを決める段階から、市民の意見を取り入れる議論が行われました。専門家だけでなく、一般の人々も同じテーブルで話し合いを行いながら万博の方向性を作り上げていったのです。

その結果、「自然の叡智」というテーマは、単なる展示のコンセプトではなく、地球規模の課題を考える場として多くの人の心に残りました。

20年後に見えた“本当のレガシー”

万博から20年が経ち、会場跡地にはジブリパークが誕生しました。多くの子どもたちが訪れ、再び賑わいを見せています。

しかし万博のレガシーは、建物や施設だけではありません。

会場には、ノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんが植えた木が今も残っています。その木は20年の年月を経て、大きく成長しました。

こうした風景を見ると、万博が残したものは単なるイベントではなく、「自然とどう向き合うか」という問いそのものだったのではないかと感じさせられます。

レガシーとは、形のあるものではなく、人の心の中にどれだけ残るかが大切なのです。

環境問題はむしろ深刻になっている

ただし現実を見ると、環境問題は改善どころか、むしろ悪化しているとも言われています。

CO₂の排出量は増え続け、国際的な環境協定も揺らいでいます。
20年前、万博で環境について考えた私たちですが、世界はまだ十分に変わったとは言えません。

だからこそ、愛知万博の精神はこれからが本当の試練なのかもしれません。

「Think globally, act locally」

地球規模の問題を考えると、あまりに大きく感じてしまいます。

しかし大切なのは、小さな行動から始めることです。

たとえば植物を育てること。
水をやりすぎても枯れ、放置しても枯れる。適度な距離を保ちながら丁寧に世話をすると、植物は毎年きちんと花を咲かせてくれます。

自然と向き合うということは、こうした小さな体験から学ぶことができるのです。

環境教育の世界では「ハチドリの一滴」という有名な話があります。
大きな問題でも、自分にできる小さな行動から始めることが大切だという教えです。


万博の精神は、これからどう生きるのか

愛知万博は終わりました。
しかし、そのテーマは終わっていません。

むしろこれからの時代こそ、「自然の叡智」という考え方が必要なのかもしれません。

地球規模の問題を前にすると無力に感じることもあります。
それでも、一人ひとりが小さな行動を積み重ねていくこと。

それこそが、愛知万博が残した本当のレガシーなのではないでしょうか。